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2016年3月28日 (月)

【ヤメゴク】暴力団対策法と使用者責任(改訂版)

以前、「【ヤメゴク】暴力団対策法と使用者責任」という記事を書いたのだが、とある場所で、この記事が誤った解釈で利用されているので、改訂版を作成するものである。

麦秋が度々口にする、「使用者責任で(組長の)橘勲を逮捕する」という言葉について、現実の法律ではどうなっているのかということを書く。

結論から言うと、ありえない

使用者責任とは、民法の用語である。そして、逮捕とは、刑法の用語である。近代法では、民法に違反(というと語弊があるが)することによって、刑事罰を課せられないのが原則である。例えば、お金を支払わなかったことによって警察に逮捕される、などということはないわけで、「使用者責任により逮捕」という麦秋のセリフは、脚本家の櫻井武晴さんによって意図的に『ヤメゴク』独自の設定として現実とは違う使われ方をしたものだと言えよう

脱線するが、「民法」「刑法」という言葉が出てきたが、これらは、法律の名前としての『民法』『刑法』に限らず、人と人との間の法律上の関係に関する法律全般を指して「民法」、いわゆる「犯罪」に関する法律全般を指して「刑法」と言っている。

ところで、「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」、通称「暴力団対策法」もしくは「暴対法」は、条文によって「民法」にあたる部分、「刑法」にあたる部分が混在しているので、ややこしいのである。

さて、使用者責任に戻る。使用者責任とは、第三者に損害を与えた本人だけではなく、そのものを使用する使用者に対しても、民法上の損害賠償責任を負わせるというものである。暴力団対策法では、第三十一条から第三十一条の三がこれに該当し、平成20年に施行された。
この条文は、指定暴力団の代表者等(当該暴力団を代表する者又はその運営を支配する地位にある者)に対して、対立抗争による暴力行為等によって他人の生命、身体又は財産を侵害した場合、生じた損害を賠償する責任を負わせるものである

これに対して刑法では、犯罪を実行したもの(正犯)が刑罰を受けるのが原則であり、そうでない場合は、共犯、間接正犯、教唆犯などの規定が刑法に規定されている。これらは全く正犯の犯罪に関与することのないものの刑事責任が問えるものではない。

暴力団対策法にも、「刑法」にあたる部分が存在して、指定暴力団の代表者自身が、暴力行為等を行った場合以外に罰則を科すことができる場合がある。

第十二条の二で、指定暴力団等の業務であって、収益を目的とするもの(同条第一項第二号)、指定暴力団員が支配する団体の業務であって、収益を目的とするもの(第二号)に関して、指定暴力団員が暴力的要求行為をした場合、または、指定暴力団員の上位指定暴力団員のによる縄張の設定又は維持の業務といった業務に関し暴力的要求行為が行われ、それが反復して行われる恐れがあるとき、公安委員会が一年を超えない範囲内で暴力的要求行為が行われるのを防止するために必要な事項を命ずることができる(「暴力的要求行為」については、暴力団対策法第九条を参考にされたい)。
この命令をするためには、第三十四条において、公開の意見徴収をしたうえで行わなければならない。
そして、この命令に違反した場合、第四十七条において、三年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金又はその両方が課せられる。

つまり、暴力的要求行為が現実に行われ、それが反復して行われる恐れがある場合、公開の意見徴収をしたうえで、指定暴力団等の代表者や、指定暴力団員の上位指定暴力団員に対して、反復して暴力的要求行為が行われないような命令を代表者等にすることができ、代表者などがこの命令に従わず、反復して暴力的要求行為が行われた場合、そのことをもって罰則が課されるのである。

・構成員による暴力的要求行為
・反復性を公安委員会(警察)が認定
・公開の意見徴収
・指定暴力団の代表者等に、暴力的要求行為が反復して行われないようにするための措置を命令
・措置に違反して再度暴力的要求行為が行われる
・命令違反をもって代表者等に罰則

ハードルは高いし、刑は軽い。

最初に戻るが、現実の世界において「使用者責任で組長を逮捕する」というのは、ありえないことなのである。

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